7期生 樽谷 真さん (本田技研工業)

 

最初の1年間はどんなことしてたの?

 まずは埼玉の狭山工場で4ヶ月の工場実習でした。文字通りラインに入ってクルマをつくるんです。細かい数字ですが、ラインでは47秒に1台、クルマが流れてきて、自分の作業をするんですけど、ベテランの方であっても40秒はかかるんです。ただ、僕らはいくらうまくなっても45秒はかかるんです。1台につき2秒くらいしか余裕ができないんですが、たまに失敗をしでかすと、15秒くらい遅れてしまいます。あとは走って巻き返すしかないんです(笑)。ところが走って走ってやっていると、またミスすることもあって、どんどん遅れが溜まっていく…。そんなことをやっていました。

いまは「日本営業本部」?…「地域事業企画室」?…「IT管理ブロック」…長いなあ(笑)

  地域事業企画室は80名くらいの所帯で、基本的には全国にある販売店をお金の軸で見ておく収益性のチェックと、国内事業の企画を柱とする部門ですね。その中で、IT管理ブロックというところは、ITに関わるビジネスを企画・運営する部門です。各部門が考案する企画の卵を、戦略・業務・収益という観点でチェックしながら一緒に育てていく社内コンサルのようなイメージです。

最初にそこに配属されて、どんなことを?

 最初にやった仕事は、「お客様相談室」のシステム改善です。お客様相談室には、いろいろな問い合わせがお客様から入ってくる。そこでオペレーターが聴いて、対応内容をシステムに入力するわけですが、そのとき緊急度とか重要度によってランク分けするんです。最初にやった仕事は、そのランク分けの基準を見直して、新しいやり方でより効率的に階層化できる仕組みにする、というものでした。

もちろんそれって、自分だけでじゃないよね?

 いえ、企画としてはひとりでやりました。実際にシステムプログラムを作るのはIT部のSEさんですが。

え?そんなの、新人にできるの?

 今いる部署は、言えば、ITが関わるものすべての、総合プロデュース部門なんです。日本国内にいろいろな部門があって、それぞれが「あれやりたい」「これやりたい」と言ってくるんです。それを各部門の担当者と一緒に、もしくは仕事として完全に引き受けて、企画として成立させるんです。
最近自分がやったのは、アフターマーケット営業部という、アフターサービスを取り仕切っているような部門が、法定点検、車検、つぎの点検と、確実にお店に来てもらえるように、点検のパッケージ商品をつくりたいと、こう言ってきたんです。ただ、そういう商品をつくりたいと言っても、いまや会社自体が非常に大きいので、全国800法人、2、500拠点で一律にサービスを行うとなれば、システムにキチッと載せないと実装はできないですよね。
  そこで、まずはウチの部門に来て、どうしましょうかと。単純に考えても、申込書を新たにつくらないといけない、もらったお金を前受金としてキチッと管理して、点検のたびに経理の仕訳をしないといけない、パックに入っているお客様に点検の案内が行かないなんてことがあっては絶対ならない…。こうなるとITやコンピュータが絡んでくるわけですね。そこで担当が割り振られて、おまえはこのプロジェクトに入ってこいって言われて、行くわけですね。で、最初にやることは、まったくシステムに関係ないことなんですけど、いわゆるあの「A00」から一緒に考えるんです、依頼してきた部門の方たちと。今回はいったいなんのために点検パックなるものをつくろうとしているのか、なにを目指しているのか、ありたい姿はなんなのか…。そんなことを問いかけながら議論していきます。でも、それをキッチリしておかないと、確かに後になってとんでもない仕組みをつくってしまうものなんですね。

それってやっぱり自分で進めるんではなくて、誰か教えてくれるひと、トレーナーみたいなひとがいるんだよね?

 もちろんリーダーの方とか、先輩たちがおられます。その方たちがわたしに聞いてくるんです、A00を。常にですね。プロジェクトとしてA00はなんだと。
  A00の次の大きな仕事は予算とりですね。点検パックをしたいという話が出てきたとして、ビジネスとしてどんな効果が見込めるか、そのためにいくらかかるか、だからいくら出して欲しいか、今回はこれだけ使わせて欲しいと、正式な会議の場でプレゼンをして予算化するんです。実はそれをあしたもやらないといけないんですけど(笑)。

それで、以降は?

 そうして予算がとれたとすると、次の仕事は業務設計になります。まずは目標要件を設定して、そこから達成条件を階層づけてどんどんブレイクダウンしていくんですね。魅力ある商品であること、そのためにはお店で値段が決められること、お客様に確実に案内ができること、そのためには何ヶ月前にはリストが出せること、といった感じで落とし込んでいきながら、そのための実現手法をクリアーにしていく。それを業務のフローとしてまとめていきます。ひとりの営業マンがひとりのお客様との間で、点検パックのお誘いにはじまって、最後はすべての点検が終了する…。そこまでの間になにが起こるのか、なにをするのか、といったことを精密に描き出していかないといけない。
 この業務設計が大変で、色んな人と協力して一生懸命に考えたはずなのに、漏れが出てしまうことがあるんですよねぇ。たとえば、僕がひとつ忘れてしまっていたのは、あるお店で点検パックに入ったお客様が、転勤とかなんらかの理由で途中で契約をやめることになったと。中途解約ってことですが、残った分のお金を返金処理して解約は成立する。ところが、なんらかの理由でそのあとにまた戻ってきて、もう一回途中からパックに復帰したいということになったと。僕の考えた業務設計では、こういうケースはエラーになってしまうんです(笑)。途中解約後の復帰ができないということで問題になったんですね。

う〜ん。もちろんこういう前段階の設計も重要だし大変だろうけど、実際できてからも大変だよね?

 はい、大変なのは実はこの後なんですよね。推進展開というフェーズです。販売店向けのこういう施策であれば、まずは全国の営業マンの方に商品について理解していただかないとならない。これが大変で、勉強会に行きますし、マニュアルもつくり、店長会議とか社長会とかでも、どんどんプレゼンテーションをしていく。ところが、リリースしたその日になって、営業の方から「こんなの知らない」って電話かかってきて、そこでも説明してと…。ここが大変ですね。


なるほど。ところで、時間が経つと、だんだん仕事の中身も変わってくるよね?スケールなんかも。

 だんだんスケールは大きくなってきていますね。最初のお客様相談室の案件は可愛いもので、予算としては200万円のものでしたが、点検パックの方はだいたい4000万円くらいかかるものでした。で、あしたプレゼンするものは予算として1億2000万円とらないといけないもので…。1億円超えるので、日本の本部長にお話しをしに行かなければならないんです。しかも、この企画だけにかかりっきりというのではなくて、いくつか並行してプロジェクトをかけもっているんです、大小かねて。

同期はどんなところに配属になったの?

 それはいろんなところですねぇ。文系でもIT部に行った奴もいますね。こうなると、仕事はプログラミング、つまりSEになりますから、僕らが業務設計したものを具体的にシステムとして動くようプログラムをつくっていく。購買部もいますね。ここだと、新モデルの開発の時なんかは、事前に部品メーカーのコンペがあるんですね。「ウチのドアミラーを是非使ってください」みたいな。すると、上司と同席しているだけ接待がものすごいと。自分を勘違いしてしまうくらいだって(笑)。経営企画部に行った奴なんかもいました。(谷地:え?いきなり?)ええ、いきなり。なんでそれはそれで困っていました。1つうえの先輩が45歳だなんて。まわりが見えないと、きっと大きなコトをしてはいるんだろうけど、わからないと(笑)。

そう考えると、君のいるところなんて見ようによっては実にいろんなことが見えて勉強になる部署だと思うが。

 それはまさにそうですね。プロジェクトによってもメンバーがぜんぜん違ってきますし、社外のひととの絡みもある。少なくとも顔は広くなっていきますね。
 でも、コンサルティングのようなことをする部署なんで、まあクセのある先輩もたくさんいらっしゃいますが(笑)。論理的というか、「こう言ったらああ言って」みたいな(笑)。せんだっても金曜日に、2つ上の、ものすごくできる先輩がいるんですけど、そのひとに…いろいろとありがたいお言葉を(爆笑)飲みながらいただいてまして。「おまえの正義はなんだ」と問われてました(笑)。「最近は偉い方とのお話しもそつなくこなし、情報もいろいろと集めるようになってきた、でも軸が見えない」って。でも、けっこうずっしり来るんですよね。確かに迷っているところがあって。若いのにあえて偉そうなことを言わないといけない、その道のことを重々知っているようなひとに対して、「それじゃあ業務がまわらないです」なんて、なかなか言えないですよね、この若造が。でも言わないといけないことがある。なので、あらかじめいろいろと裏とり・裏付けをやったりしているんですが、その方曰く、「まだ絶対的な価値観が足りないんじゃないか」と。その方とはぜんぜんバックグラウンドは違うんです。建築学科で設計図を書いていたようなひとで、趣味も音楽だったりで繊細な感覚の持ち主で、自分は逆のような…。

とはいえ、さっき「すごくできるひと」って言ってた。ということはどういう意味でできるってことなの?

 う〜ん。ロジカルっていうと薄っぺらいんですが、とにかくブレないんです。話でも目の前で積み上げられていくんですよ。最後追い込まれるんです(笑)。徹底しているということもあって。忘年会であろうと送別会であろうと、緻密に計画しないと気が済まない。10分とか、すごいときは5分刻みで、このときにここでどう動いてみたいな進行表をサッとつくってくるんです。で、「あしたはこれで行くぞ」と。「忘年会なんですが…」って言いたくなるんですけど(笑)。

やっぱりそういうところでもA00を考えてるの?

 ええ、考えていますね。僕がやるときは必ず聞かれますから。飲み会でも「今回はなにねらってるの?」とか(笑)。それは最初ビックリしましたね。

いままで仕事していて、いちばんきつかった瞬間は?

 う〜ん。きつかったという表現が正しいかはわかりませんが、僕は1回、会議中に涙が止まらなくなったことがありました。
 それは保険会社との合同プロジェクトだったんですが、かなり無理なスケジュールが組まれていて、この日までには必ずプロジェクトを完成させないと、保険会社側に損害が出ると。その言い分はわかるんですけど、こちらとしても絶対に質を落とすわけにはいかない。納期をとるか品質をとるかで保険会社ともめていました。
 僕の上司も最初は「なにがあっても味方してやる」って言っていたんですけど、そのうち保険会社のお偉方が3人くらい乗り込んできまして、「このままだと、これくらいの損害が出る」と、生々しい資料をもってきて脅しにかかってきたんですね。
 そこで上司も結局折れまして、「そこは樽谷にもちゃんと言っておきます」みたいなことを会議の場で言われたんですよね。そのときに「優先順位がおかしいんじゃないですか?」って言いながら、涙がぽろぽろ出てきてしまったんです。サラリーマン金太郎じゃないんですけど。あとで謝られました、上司に。「あのときはああいうしかなかったんだ」と。

じゃあ、逆にいままでで仕事で舞い上がった瞬間は?

 舞い上がった瞬間ですか?…。基本的に自分は慎重なんで、なにか良いことがあっても手放しで喜ぶことはないんですが…。やはり、アウトプットとして自分が手がけた仕組みが立ち上がって、世の中に出た瞬間は舞い上がりますね。さっき言った点検パック、「まかせちゃお」って商品なんですが、ホンダの店に行ったりするとパンフレットとかが、ちゃんと置いてあるんですね。それを見ると感慨がありますよね。あと、ホンダは熱いイメージが強いと思うんですが、入ってみると意外にけっこう職人柄のひと、寡黙で確実に仕事をこなすような、そういうひとがいるんですね。僕はそういう方に評価されたり褒められたりすると、すごく嬉しくなりますね。