プレゼンテーションの準備―パワポ・シートの作成

 

 

ポジションの重要性

 「パワーポイント」(以下,マイクロソフト社の商標表示は割愛させていただきます)でシートをつくるときの全体的なキモが「ポジション」です。
 これは,プレゼンテーションとして「全体はどんな流れになっているのか」,「いまどこにいるのか(なにを話しているのか)」を聞き手に対して明らかにしようということです。

 これは聞き手・話し手双方にとって大切なことです。
 聞き手というのは悪く言えばせっかちで,早いところプレゼンの内容を知りたがりますし,先のことを知りたがります。わたしが会社の研修や授業などでプレゼンをするときも,受講生のなかに配布された資料をすぐにパラパラとめくるひとをよく見かけますが,とにかく知りたいのでしょう。もちろん,自分も配付資料があればそうします。ほかにも,「このセッションはどれくらい時間がかかるのか」を知りたがっているのかもしれません。

 ひとは基本的に,これから先なにがどうなるのかわからないという状態を嫌がるものです。それが一種のストレスになるので,なんらかの手がかりとなる情報を得ようとするものです。このような聞き手の性(さが)をふまえるなら,以降どんな流れで進んでいくのかを最初に示してあげると良いでしょう。これを「アジェンダ」と言いますが,シートの最初はちょうど目次のような感じで流れをヘッドラインとして掲げておきます。下の図はその一例です。そのうち,ここは最後のテーマにあたるということで,四角枠の色や中の文字をほかよりも濃くしてあり,すでに終わった部分は薄くしてあります。
 アジェンダは最初に示されますが,そこで聞き手に安心感を与えるだけにとどまりません。ある程度プレゼンに時間がかかるのであれば,途中で聞き手は「あと残りどれくらいあるんだろうか」「いまどこまで進んだのか」について,知りたくなるはずです。途中に浮かんでくる,そんな疑問に答えるためにも,アジェンダを示しておくと,聞き手はつねに現在のポジションを知ることができるので,やはり安心感を提供することに資するでしょう。

 話し手にとっても,同じように「これからなにを話すのか」「いまどこまで話したのか」「あと,残りどんなことを話すのか」を把握できると,よりスムーズにトークができるようになります。ただ,もし事前にしっかりと骨組みをつくってパワーポイント・ファイルを作成したとすると,このあたりは頭に入っているはずです。なので最初のアジェンダ提示は,それを本番で確認するという意味を持つことになります。

 ポジションは,最初に示すアジェンダだけではありません。すでに挙げた聞き手のニーズに応えるために,テーマの転換点ごとに「いまどこにいるのか」「これからなにを話すのか」を示してあげると良いでしょう。最初に示したアジェンダのシートを転換点の最初にコピーしたうえ,すでに終わった部分を少し薄い色にしてそのことを表現したり,いまから話す部分を強調したりしてビジュアル化するといいでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



 ポジションの3つめはパワーポイントのフォーマットに関わることですが,シートの上か下のところに,必ずページをふっておきましょう。あたりまえのようですが,意外とページ番号のないパワポ・シートを見ることが多いです。
 パワーポイントでは「挿入」→「ヘッダー・フッター」→「スライド」と開くと,そこに「スライド番号」という項目があります。ここにチェックを入れておくと,ページが自動的にふられます。
 ページもポジションを知るための情報です。なによりも重要なのは,プレゼンのあとに質疑応答をする場合です。ページがふられていないと,どのシートに関わる質問をしようとするのかがわかりにくくなってしまいます。ページがあれば,その該当するところを言って,具体的な質問をすればいいわけです。
 

 

フォントとポイント

 パワーポイントの見栄えを左右する要因の1つは,どんなフォント(字体)を使うかです。
 パワーポイントに限らず,Windowsには実にいろいろなフォントが入っています。ところが,多くの方のパワポシートを拝見すると,フォントを使いこなせていない場合が多いのも事実です。いちばん多いのは,「MSゴシック」あるいは「MS Pゴシック」と呼ばれているフォントです。いわばパワポのデフォルトになっているフォントです。 ところが,わたし自身はこのMSゴシックというフォントには迫力不足を感じます。また,なにか素人っぽさを感じてしまうのです。
 そこでオススメするのが「HGP創英角ゴシックUB」というフォントです。実際にフォントを表示してみましょう。

「MS Pゴシック」 「HGP創英角ゴシックUB」

 …どうでしょうか。後者の方ががっちりしていて綺麗に見えませんでしょうか。前者がMS Pゴシック,後者がHGP創英角ゴシックUBで表現したものです。パワポ用のフォントとして,日本語はHGP創英角ゴシックUBがオススメです。なお,フォントのオプションには「HGS創英角ゴシックUB」というものもあります。これはMSとMS Pの関係と同じで,字体そのものに違いはありませんが,字間隔が違っています。「P」の方が少し詰めた感じになっています。Sと比べると,Pの方が見栄えが良いと思います。

 シートに記入するのは日本語だけではありません。数字やアルファベットもあります。
 この2つの文字で気をつけたいのは,決して「全角」で記入せず,「半角」で記入するということです。これもやはりシートの見栄えに大きな影響を与えるものです。両者を比べてみましょう。
 一見するとあまり違いは感じないかもしれません。しかし,たとえば数字を金額とみなし,桁表示をしてみましょう。

 「123,456」 「123,456」

…前者が全角ですが,それだとカンマの部分が妙に間の空いた感じになります。アルファベットも,これが文字の少ない単語であればあまり気にならないのですが,文章になったり,文字の多い単語になると,横に間延びした感じに見えてくるものです。全角ではなく,数字とアルファベットは半角で入力しましょう。

 数字とアルファベットは,使うフォントも少し違ったものにすると見栄えが良くなります。それは「TimesNewRoman」と呼ばれるフォントです。
 
「TimesNewRoman」(MS P明朝),「TimesNewRoman」(MS Pゴシック),「TimesNewRoman」(TimesNewRoman)となります。

 3つのなかでは明朝とは比較的に類似していますが,「TimesNewRoman」の方が文字にメリハリがあって,いかにもアルファベットという感じがしませんでしょうか。ほかのゴシック,とくに創英角は日本語で使うということもありますし,数字とアルファベットは「TimesNewRoman」を使って記入すると格好良いでしょう。ちなみに,細かく言えば,創英角を日本語に使うと,線が太いので「TimesNewRoman」そのままだと細く見えてしまいます。なのでわたしは「TimesNewRoman」を太字体にしています。以下のような感じです。

TimesNewRoman

 このように,フォント1つでシートの見栄えは大きく変わります。別にひとを騙すわけではないですが,見る側からすれば,見栄えの良いシートの方がなんとなく信頼感を感じるものです。適宜フォントを使い分けてわかりやすく,見栄え良くシートを作成しましょう。
 ただし,フォントの使い方には必ず規則性を持たせてください。規則性がなかったり,あまりにいろんなフォントを使うと,かえってわかりにくくなってしまいます。


アニメーション

 パワーポイントの機能に「アニメーション」というのがあります。
 これを使うと,プロジェクターに投影したとき,文字や図形がいろいろなスタイルでシート上に現れるようになります。聞き手を惹きつけるための重宝な機能です。

 アニメーションを使わないで,シートごとにその内容がいちどにすべて出てくることも可能であり,そういう使い方をしているひとの方が実際は多いです。しかし,1シートの内容がすべて最初に出てくるのでは躍動感がないし,すべてを表示されればプレゼンターが話すまえに,聞き手はこれから話すことを先に知ってしまうことになります。

 アニメーションには,@シートが変わるとき,その変わり方としてのアニメ,Aシートのなかでのアニメ,この2つがあることを覚えておき,視覚効果としてどんどん活用することをオススメします。

 ただし,アニメの設定では注意点もあることを忘れてはいけません。
 アニメでは,どういうふうに文字や図形が出てくるか,その出方だけではなく,タイミングという設定もあります。そこには,@クリック時,A直後,B同時というオプションがあります。
 @は,ユーザーが操作をすることではじめて文字や図形が出てくるようになる設定です。Aは,まえの文字や図形が出た後に,続いて自動的につぎの文字や図形が出てくるというもの。Bは複数の文字や図形が同時に出てくるというものです。
 ここで,シートのなかに複数ある文字や図形に対して,あまりに@ばかりを設定すると,それだけプレゼンターの操作が多くなってしまいます。慣れていないと操作が多くなる分だけ,そこに意識をとられてしまい,トークがおざなりになってしまう可能性や,間違った操作をしてしまうリスクがあります。
 なので,話の流れに応じて,止めたいところでは@を設定し,そうでないところはAやBを設定して自動的に文字や図形が出てくるように,メリハリのあるタイミング設定をするように心がけましょう。やり方としては,シートに文字や図形を記入したところで,そこで自分が話すことを頭でイメージしながら,アニメ設定をしていくようにします。一通り設定ができたら,予行演習的に話をしながら設定を確認し,しっくりいかないところがあれば,そこを修正していきます。特に,タイミングを自分のトークに合わせておかないと,トークがアニメでの表示待ちになったり,逆にトークがパワポに先行してしまうというような「ズレ」が生まれてしまいます。これは見た目格好悪いものですから,要注意です。